「比較情報の取扱いに関する研究報告」(公開草案)」 の公表
日本公認会計士協会より、、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」が公表され、また、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」等において、比較情報の作成が規定されたことに対応するため、主に比較情報の開示に関して検討を行い、会計制度委員会研究報告「比較情報の取扱いに関する研究報告」(公開草案)が公表されました。
主な内容
1.比較情報に関する基本的な考え方
比較情報の開示に関する基本的な考え方は、当事業年度に係る財務諸表の開示が基礎になる。たとえば、「重要な会計方針」の開示に際しては、当事業年度の開示のみで足りると考えられる。また、前事業年度の「重要な会計方針」において「引当金の計上基準」を開示していたが、当事業年度において、引当金の計上対象となる事実がなくなり、引当金を計上しなくなった場合、当事業年度における開示は必要ないと考えられるが、前事業年度に計上していた引当金の重要性が高く、当該引当金の計上基準を開示することが、財務諸表利用者の意思決定に資するものであり、企業の業績等に関する適正な判断のために必要と判断する事項であれば、開示しなければならない。
2.連結財務諸表への移行に伴う比較情報の開示
前事業年度において個別財務諸表のみを開示していたが、はじめて連結子会社ができ、連結財務諸表および個別財務諸表の開示へ移行する場合には、当連結会計年度の連結財務諸表(四半期連結財務諸表)には、対応する比較情報は存在せず、開示を要しない。
3.個別財務諸表への移行に伴う比較情報の開示
前連結会計年度まで連結財務諸表を開示していたが、子会社の売却により個別財務諸表のみの開示へ移行する場合、連結財務諸表のみで開示されていた情報(キャッシュ・フロー計算書、金融商品注記など)については対応する比較情報の開示を要しないが、前事業年度の個別ベースの情報を当事業年度の財務諸表に含めて開示した場合には監査対象となる。前連結会計年度の「金融商品に関する注記」は連結ベースで開示されており、個別財務諸表での注記は行われていないが、個別ベースの情報は存在すると考えられるため、四半期財務諸表への注記要否の判断時における前事業年度の末日に比して著しい変動が認められるか否かについては、個別ベースで比較して判断する。
4.初めて連結財務諸表を作成する場合の会計方針の変更
初めて連結財務諸表を作成する場合で、親会社の個別財務諸表において会計方針の変更が行われているときには、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項には、各連結会社の財務諸表作成に係る会計処理の原則および手続が含まれるので、当該会計方針の変更に関する注記が必要となる。なお、新規に取得された子会社において会計方針の変更が行われていたとしても、当該会計方針の変更に関する注記は不要である。
5.非連結子会社から連結子会社になった場合の比較情報の開示
期の途中において業績が大きく変動し、従来、非連結子会社として取り扱っていた子会社について、重要性が高まったため、期の途中から連結子会社として取り扱う場合、連結範囲の変更は会計方針の変更に該当しないことから遡及適用されず、当該連結子会社の期首からの損益を連結財務諸表に取り込む。当該連結子会社の期首の剰余金等については、連結株主資本等変動計算書において、「連結範囲の変動に伴う子会社剰余金の増加高」等の適切な名称をもって表示する。
6.連結子会社の事業年度等の変更
連結子会社の事業年度等に関する事項の変更については、会計方針の変更に該当しないので、連結子会社による仮決算から正規の決算への変更は会計方針の変更に該当しない。親会社または子会社の決算日の変更が行われた場合にも、会計方針の変更に該当しない。
7.親子会社の決算日の変更に伴う会計処理及び比較情報の開示
決算日の変更は会計方針の変更に該当しないが、四半期報告制度や次年度以降の比較情報の有用性等を考慮すると、会計方針の変更の取扱いに準じて、親会社の第1四半期決算から四半期連結決算日の統一を行うことが適当と考えられる。親会社が3月決算、子会社が12月決算であったときに、決算日の統一を行うために子会社が3月決算に移行する場合、子会社の事業年度に係る期間は15カ月となるが、最初の3カ月の損益については、連結財務諸表上、利益剰余金で調整する方法と損益計算書を通して調整する方法の二つがある。
前者を採用する場合には、連結株主資本等変動計算書に、利益剰余金の増減として「決算期の変更に伴う子会社剰余金の増加高」等の適切な名称をもって表示する。いずれの方法を採用する場合においても、当該連結子会社の事業年度の月数と連結会計年度の月数が異なることになるので、その旨および内容を連結財務諸表に注記する。
8.会計方針の変更と表示方法の変更の区別
「財務諸表の表示区分を超えた表示方法の変更」と「会計方針の変更」の区別については、資産および負債ならびに損益の認識または測定についての変更があるかどうかによって行うことになる。たとえば、前事業年度まで営業外収益に計上していた賃貸収入について、当事業年度から売上高に表示区分を変更する場合のように、売上利益および営業利益という区分を超える変更であったとしても、資産及び負債ならびに損益の認識または測定について変更が行われないときには表示方法の変更として取り扱われる。一方、損益計算書の売上高の表示に際して、過年度における総額表示が適切であり、また、取引契約の内容が変更されるなどの事実の変更がないという前提において、正当な変更の理由の存在および変更の適時性が認められる場合に、売上高と売上原価を相殺し、純額で表示する方法への変更は、損益の認識または測定の変更を伴うものであるので会計方針の変更として取り扱われる。
9.比較情報の開示の要否
前事業年度において特別損益項目として固定資産売却益を認識していたが、当事業年度においては重要性が乏しくなり、特別利益の「その他」に含めて表示している場合、比較情報については固定資産売却益を「その他」に組み替え、表示方法の変更に関する注記を行う。また、前事業年度において特別損益項目として固定資産売却益を認識していたが、当事業年度においては発生していない場合、比較情報については固定資産売却益を表示し、当事業年度については、「-」で表示することが適当と考えられる。
10.注記に関する表示方法の変更
販管費の表示について、販売費及び一般管理費の科目に一括掲記し、主要な費目・金額の注記を行っているときに、当事業年度の注記において、前事業年度まで「その他の販売費及び一般管理費」として表示していた費目について、重要性が高まったことから独立科目として別掲することとした場合、表示方法の変更に該当するものとして、原則として前期の注記の組替えを行い表示方法の変更に関する注記を行う。
11.注記に関する比較情報
前事業年度の開示後発事象として注記していた事項については、当年度の財務諸表において比較情報として開示する意義は乏しいものと考えられるが、たとえば、係争事件における訴えの提起から解決までの間の経過のように、それが財務諸表に反映されるまでに様々な経緯を経るものがあり、その影響が財務諸表に反映されるまでの間に生じた事情に応じ、先に開示した事項を更改・補正し、またはその経緯そのものを開示するため、これらを後発事象、追加情報、偶発債務等として引き続き開示する必要がある場合がある。また、企業結合が行われた場合の注記に際しては、原則として、前事業年度に行われた企業結合等を比較情報として開示することは要しないと考えられる。
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