企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」の公表
企業会計基準委員会より、退職給付に関する会計基準等の見直しのステップ1(未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の処理方法など)として企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」が公表されました。本基準は、現行の「退職給付に係る会計基準」および関連する実務指針等を改正するものであり、平成25年4月1日以後開始事業年度から段階的に適用されます。
主な内容
1. 未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の処理方法
未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用を、税効果調整の上で貸借対照表の純資産の部(その他包括利益累計額)で認識することとし、積立状況を示す額(退職給付債務から年金資産の額を控除した額)をそのまま負債(退職給付に係る負債)または資産(退職給付に係る資産)として計上する。
未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の当期発生額のうち費用処理されない部分(未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用)については、その他の包括利益に含めて計上する。未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用のうち、当期に費用処理された部分については、その他の包括利益の調整(組替調整)を行う。
上記については当面の間、個別財務諸表に適用しない。
2. 退職給付債務および勤務費用の計算方法
退職給付見込額の期間帰属方法
期間定額基準を原則。(現) → 期間定額基準と給付算定式基準の選択適用。(新)
割引率
退職給付の見込支払日までの平均期間を原則とするが、実務上は従業員の平均残存勤務期間に近似した年数とすることもできる。(現)
→ 退職給付ごとの支払見込期間を反映するものでなければならず、たとえば、支払見込期間および支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法や、退職給付の支払見込み期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法が含まれる。(新)
予想昇給率の見直し
「確実に見込まれる」昇給等が含まれる。(現) → 予想される昇給等が含まれる。(新)
3. 開示の充実
確定給付制度の注記事項
・退職給付の会計処理基準に関する事項
・企業の採用する退職給付制度の概要
・退職給付債務の期首残高と期末残高の調整表*
・年金資産の期首残高と期末残高の調整表*
・退職給付債務および年金資産と貸借対照表で計上された退職給付に係る負債および資産への調整表*
・退職給付に関連する損益*
・その他の包括利益で計上された数理計算上の差異及び過去勤務費用の内訳(個別は開示要しない)
・貸借対照表のその他の包括利益累計額に計上された未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の内訳(個別は開示要しない)
・年金資産に関する事項(年金資産の主な内訳を含む)*
・数理計算上の計算基礎に関する事項*
・その他の退職給付に関する事項*
* 連結財務諸表に注記している場合、個別財務諸表への記載を要しない。
4. 複数事業主制度の取扱い
年金資産の額の合理的な計算ができない場合に該当しないケースのうち、現行基準の「複数事業主間において、類似した退職給付制度を有している場合」を削除し、制度の内容を勘案して判断することとする。
5. 長期期待運用収益率の考え方の明確化
長期期待運用収益率は、年金資産が退職給付の支払に充てられるまでの時期を考慮して決定することを明確にする。本改正は会計方針の変更には該当しない。
6. 名称等の変更
退職給付引当金(現) → 退職給付に係る負債(新)
前払年金費用(現) → 退職給付に係る資産(新)
過去勤務債務(現) → 過去勤務費用(新)
期待運用収益率(現) → 長期期待運用収益率(新)
7. 個別財務諸表
当面の間、上記1.は適用せず、現行基準の処理を継続する。
表示においても、上記6.について、「退職給付引当金」、「前払年金費用」とする。
連結財務諸表を作成する会社においては、個別財務諸表において未認識数理計算上の差異および未認識過去勤務費用の貸借対照表における取扱いが連結財務諸表と異なる旨を注記する。
8. 適用時期等
①下記②を除くすべて
平成25年4月1日以後開始する事業年度末に係る財務諸表から適用する。早期適用として、平成25年4月1日以後に開始する事業年度期首から適用することができる。
過去の期間の財務諸表に対しては遡及処理しない。適用にともなって生じる会計方針の変更の影響額については、その他の包括利益累計額(退職給付に係る調整額)に加減する。
②上記2.4.
平成26年4月1日以後開始事業年度の期首から適用する。ただし、実務上困難な場合には注記を行ったうえで平成27年4月1日以後開始事業年度の期首から適用できる。
ただし、平成25年4月1日以後開始事業年度の期首から早期適用できる。
過去の期間の財務諸表に対しては遡及処理しない。適用にともなって会計方針の変更の影響額については、期首利益剰余金に加減する。
本会計基準適用前に期間定額基準を採用していた場合であっても、適用初年度の期首において2. 退職給付見込額の期間帰属方法の給付算定式基準を選択することができる。
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